アリのように必死に。 そして、トンボのように立ち止まったり、後戻りしながら。 シジミチョウのように、柔らかな青に染まった翅を自在に動かして、私は飛んでいく。

15

気が付くと、私は家についていた。

 どうやって、帰ってきたんだっけ。

 電車から降りた記憶も家の方の道を歩いた記憶もすっぽりと抜けている。

 さっきまでのことが妄想や夢のようで、現実じゃなかったような感覚。


 でも、私は2人とあの場所で会うのをすっぽかしてしまったみたいだ。

 
 研究会のチャットの方に、若葉さんから連絡が来ていた。

 「芽生ちゃん。今日来なかったけど、予定何かあったの?」


 この時に、すっぽかしたことを謝ればよかったのだろう。

 だけど、その時の私にはそんな思考などなかった。

 
 茫然としていて、どこか他人事で現実味がなかった。
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