鬼縛る花嫁~虐げられ令嬢は罰した冷徹軍人に甘く激しく溺愛されるが、 帝都の闇は色濃く燃える~
序章(序章のみヒロイン視点)
私が、九鬼兜家へ嫁入りした時に、咲き誇っていた春の薔薇。
今はもう、薔薇の花は終わってしまっていました。
二人きりで、庭を歩く静かな時間。
立派な軍服に身を包んでいるのは、私の夫。
大日麗帝国・対妖魔軍少佐・九鬼兜要。
これから戦地へ赴く、私の愛する人。
『帝国の冷徹武士』と呼ばれ恐れられていた人。
でも私にとっては、誰よりも私を愛してくれる優しい夫。
「……要様……」
哀しみに揺れる私の手を握って、綺麗な紅い瞳が私を見つめる。
「鎖子。俺は必ず帰ってくる」
「はい……待っています。要様……」
優しく抱きしめられて、唇が触れ合う。
「愛している」
私の涙を、優しく拭ってくださる。
軍人の妻として至らない私を、怒りもせずに優しく……。
「愛しています……要様……」
屋敷から出る馬車を、見送る時にまた涙が溢れました。
幸せの絶頂から、突然の出征に……私の心は引きちぎられるように痛んで痛んで……。
でもずっと、ずっと、愛する貴方の帰りを待っています。
必ず帰ってくると、信じています。
九鬼兜要の妻として、ずっと強く待っておりますから……絶対に、帰ってきてくださいませ……要様。
それなのに、数カ月後……届いたのは彼の死を告げる『戦死公報』でした。
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