【完】オキナグサに愛を込めて
「お前、家ないのか…?」
本気で心配してくれてるのかさっきよりのも声のトーンが優しくなった。
それでも低く落ち着いた声にどこか安心感を覚える。
『い、家はあります。1丁目です…』
嘘をついていることに後ろめたさを感じて目を見れなかった…。
「…嘘つくなよ。なんだ、家に帰りたくねぇ理由でもあんのか?」
これ以上迷惑は掛けられないから近くのカラオケにでも行って朝まで時間を潰そうと思ったのに、どうして嘘だと分かったんだろう。
びっくりして顔を上げた時、バチッと目が合った。
『そ、それが、家の鍵閉まってて入れなくて…』
12時を過ぎたらチェーンを掛けられてしまうこと。いつもはカラオケで時間を潰すことをレンさんに話した。
どうしてこんなに素直に話してしまったんだろう。
レンさんの目と声は不思議と嘘をつかせてくれなかった。