ゆびさきから恋をする
「……仕事、続けてもいいですか」

 泣き続ける彼女がぽつりとつぶやいた言葉はそれだった。

「止める理由がない」

「辞めますって言ったのに……」

「言葉で言っただけのことだろ。しかも俺相手に……そもそも俺は認めてないし」

 認めるつもりもないんだ、なんなら説得してる。辞めさせるわけがない。

「久世さんは……いつか本社に戻るんですか?」

 唐突な彼女の質問に本気で首をかしげてしまった。どういう意図があっての質問なのか。

「さぁ……辞令が出たらあるかもね。なんで?」

「……本社に戻りたいのかなって」

「戻りたいかは……どうかな。別に今は今で開発の仕事も嫌いじゃないし与えられた仕事するよ。声上げてまで戻りたいとか考えたことないけど」

 素直な気持ちを返すと彼女はホッとしたのかまた涙を滲ませて。ゆびさきで拭うけれど取りこぼす涙が零れ落ちる。


(ダメだ。この涙、腰に来る)


「もう泣くのやめない?」

 このままだととてもじゃないが冷静でいられなくなる。

「だから……泣かせてるのは、久世さんだもん……」


(……急に敬語をとるのとか可愛すぎるからやめてくれ)
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