ゆびさきから恋をする
 ぽろっとこぼす敬語が取れた言葉に可愛さが増す。しかもさっきまでは殺気だった猫みたいだったのに。

(くそ可愛いんだけど、なんだこれ)

 腕の中にいる彼女が一変。警戒心がいきなりとれたみたいにすり寄って、懐くように可愛くなるから……。


「まだ……久世さんの下で働きたいです」

 しかも言うことまで可愛い。

 彼女が自分を上司として認めて好いてくれているのかと思うだけでどうしようもないほど胸に込み上がってくるものがあった。

 そんな心情の中、彼女がぽつりとこぼしてくるのだ。


「……すき」


 一瞬聞き逃してしまいそうなほどの小さなその言葉に、「え?」と間抜けな声をあげてしまった。

「すき」

 そう言って顔を両手で隠して俯く。隠しきれてない耳が真っ赤に染まっていた。

 顔を見られたくない、そんな素振り。でもそれは俺も同じかもしれない。

 その気持ちとそんな彼女の可愛さに、グッと身体を引き寄せて抱きしめると首筋に熱い息が吹きかかる。

 そして感じる気持ち、体感を……。

 抱きしめている、彼女を。
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