ゆびさきから恋をする
「わー! く、久世さんっ! すすす、すみませんっ!」

 ビビりまくるウッチーはしどろもどろでどこからどうみてもテンパっている。それもそうだ、純水だから体にかかったところで害などはないが……実験室はビチョビチョの軽く水浸しである。

「なにこれ、純水?」

「そ、そうです! 危ないもん溢したわけじゃ……」

「そういう問題じゃねぇよ」

 冷ややかな久世さん。完全に怒っているのがわかるからウッチーは固まってしまい隣にいる私まで気まずい。二人してずぶ濡れになっていたら私も共犯みたいで……。

(完全に飛ばっちりなんだけど……)

 ポタポタと髪の毛から落ちる水滴がなんだか無駄に切ない。


「ち、ちぃちゃんホントごめ……」

 申し訳なさそうな声に振り向いて見上げたらウッチーはやっぱり固まっている。私をガン見して。

「?」

 見られているのに全く視線が合わなくておかしいなって。ウッチーの視線がなんだか顔よりも下にあるから自ずと自分の視線も下に落ちていき……気づいた。

「きゃあ!」

 上半身がしっかり濡れた私は制服が体のラインに張り付くようで……思わず両手で身を隠して悲鳴を上げた。そんな私の露骨な態度に凝視していたウッチーはやっとハッとして嘘くさい弁明を始める。

「見てない! ごめん! 見てないから!」

「絶対見てる! ばかぁ!」

「違う! 変な目で見てないっ!」

(そういう言葉が出る時点で見てるの! 嘘くさぁい!)
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