ゆびさきから恋をする
 とりあえず人目もあるから実験室に連れて行くとしぶしぶついてくる。

 依頼の内容を説明していると依頼書をでかい目がじっと見つめている。そこで初めて俺も、彼女にサンプル名さえもろくに伝えずに仕事を振っていたのかと気づく。

(なにやらされてるかわかんないのは面白くないわな、そりゃそうだ)


 彼女が文句を言いたくなるのもわかる。これからは正式に依頼(仕事)として渡してやろうと決めた。


「負けん気強いよな」

 笑って言ったら明らかにムカッとした表情で。それはまるで殺気だった猫みたいだったからまた面白い。

(こういう態度取るヤツ、新鮮)

 それと同時にどこかでこの子を懐かせてみたいとも思った。この勝気でちょっと生意気そうな顔を隠し持つ年下の部下。

 面白くて育ててみたくなった瞬間だった。
 それから隙を見ては仕事を振ったり割り込ませたりして俺のできない仕事をうまく捌かせているとさすがにキャパが埋まってきたのか彼女の進捗が止まりだすのだ。
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