ゆびさきから恋をする
 階によって雰囲気も客層もガラリと変わる。当たり前か、専門書コーナーにはビジネスマンや落ち着いた年配の方や学生さんなんかがチラホラ。それでも人数は数えるほどしかいない。

 (専門書コーナーってこんな感じなのね)

 初めて訪れる場所にワクワク、そしてなんだか少し誇らしげな気持ち。

 自分もこういう場所に足を踏み入れていいのだと。私は今こういう世界にあるものを仕事にして生きていたんだなと実感した。


 (化学……科学とは違うもんな。バケガクって……言い方面白い)
 
 漢字で意味はわかるのだけど。バケガク……心の中でつぶやいてクスリとしてしまう。

 私が興味があったのは実験とかどうこうではなく、元素の持っている性質。なんとなく重いとか軽いとかそんなことはフワンと知ってるけれど、それだけだ。

 並ぶ本のタイトルを見つめつつ気になるものを手に取り数冊広げては戻し……なかなか理想的なものには出会えない。

 (なんか難しいなぁ……当たり前だけど。理屈とかじゃなくてプロフィールみたいに説明してくれるのないのかな)

 元素の個性みたいな擬人化した漫画とかないんだろうか。そんな想像をして脳内で吹き出す。手に持つ本を棚に戻してフト視線に入った。

 (……元素辞典?)
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