ゆびさきから恋をする
 そんな思いは言葉にならないけれど表情に出てしまい当然それを読み取られる。

「そんな俺いい人じゃないし」

「……でも取ってくれたじゃないですか」

「そりゃ知った人だから」

 そんな台詞をサラッと言うのだからたまらなくなる。

「元素辞典?」

 久世さんは手元の辞典を見てパラっと開ける。パラパラと紙の乾いた音がして、そのままパタンと閉じたら全体を見返して渡された。

「はい」

「ありがとうございます……」

「面白いの手に取るなぁ」

「……興味あって」

 恥ずかしさもあって視線をそらすが言い訳も出来ない。手を伸ばしたのがそれなのだから。

「へえ」

 でも久世さんは笑ったりもせず興味深そうに見つめてくる。
 
「特性とか、反応とか……みんな違ってて。でもそういうことあんまり意識して知識としていれてないなぁって思ったら知りたくなっちゃったんです。せっかく……その、仕事で触れてるし……」

「……」

「理解するの大事って……久世さんが言ったでしょ? だから……その……なんですか!」

 (イケメンが真っ直ぐ見てくるの無理!)
 
 照れ隠しの勢いで言い切って久世さんのせいにしたらふはっと笑われて言われてしまった。

「そんなん興味もつ女の子、あんまいないと思うけどな」

「……っ! 変な女ですよ! どうせ私は!」

 確かにこんな元素辞典広げる女の子そんなにいないかもしれない。

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