ゆびさきから恋をする
 二人横に並んで窓辺の席に座った。

 久世さんはコロンビア・ブラックのホットコーヒーを。私はミルク多めのカフェオレとついでに甘えたハミングバードケーキ。

「ふわぁ、いい匂い……」

 ハミングバードケーキは初めて食べる。名前が可愛くてずっと気になっていた。

 そこそこ大きくカットされているけれど食べれないかも? みたいな可愛い心配などない。
 
 (美味しそう!)

 それでもその前に伝えねば。

「いただきます」

「どうぞ」

 目元で笑われて少し照れるけれど目の前の誘惑に負ける。

 フォークを入れた瞬間、しっとりと柔らかな生地がふわりと崩れた。立ちのぼる香りは、バナナやパイナップルの甘み、それにほんのりスパイス。思わず胸がふわっと温かくなる。

 一口すくって、そっと口に運ぶ。舌に触れた瞬間、ほろりとほどけた。

「んー! 美味しい!」

 思わずこぼれた感想に久世さんは何も言わない。コーヒーを口に注ぎながらジッと見つめられる。

 しっとりしているのに、決して重たくない。バナナのやさしい甘さに、パイナップルの爽やかな酸味、砕かれたナッツのカリッとした食感。一口の中に、たくさんの小さな発見が詰まっている。

「ふぅん……こういう味だったんだぁ」

 そしてまたアムッと口に含んで口いっぱいに広がる甘酸っぱさと、しっとりした食感に目を細めたのだ。
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