ゆびさきから恋をする
 その声が思いのほか大きく出て事務所の人たちが一瞬こちらを見た気がしたが言った以上止められるわけがない。

 むしろ言うために声をあげた。その様子に久世さんもパソコンの手を止めて体の向きを私に向けて見上げてきた。


「なに?」

 どうぞ言ってくれ、みたいな態度に余計カチンとくる。


(この人だいたいちょっと態度悪いんだよ、偉そうっていうか……上から? 上なんだけどさ!)


「急ぎならそれを優先するのでちゃんと指示いただけませんか?」

「別に急いでないよ」

「空いた時間って言われるとやりにくいんですが」

「優先度は自分の仕事重視でいいよ」

「そう言われてもです」

「でも捌けてるじゃん」


(それは意地でもやってやろうと思ってるからなんだよ!)


 ……は、もちろん言わない。頭の中ではめちゃくちゃ思ってはいるが、口にはしない……しないが!


「ついでみたいにはできません!」
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