ゆびさきから恋をする
 脇腹あたりの制服の裾をいきなり掴まれて驚いた。その手がわかりやすく震えていて「雷苦手?」そう問いかけた俺の質問の答えを示していた。

「く、暗いのも……ちょっと……無理なほうで、その」

 ゴロゴロ雷が鳴るとまた声を震わせた。

「ひゃ……! かっ、雷と同時には……ちょっと、きゃあ!」

 まだ鳴る雷にとにかく怯えている。

 本人の話し方はなるべく平静をよそっている風にも聞こえるけれどまぁそんなことは全くできていなくて。体を縮こませて、雷が鳴るたびに体を震えさせていたら無理をしているのが一目瞭然だった。

 普段見ることのない彼女の意外な一面をまた知った。

(こんな素の感じは初めて見るな。なんだろう、幼い子みたいな……)

 いつも基本静かに黙々と仕事して。感情をあまり出さないようにしているような姿が目に付いていた。

 それが今は無防備で、隙がある。そこまで思って思考を止めた――余計なことは考えない方がいい。

「とりあえずここ出ようか。実験室のがマシ……」

(かなぁ……階がまだ上にあがるし窓も多いから逆に雷に近づくか?)

「いや、待って。まずいな」

 そこで俺はハッとした。
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