ゆびさきから恋をする
 それでも彼女は落ち込んだように言う。

「こんな……醜態を」

 自己嫌悪に陥っているようなひどく暗い声だったから呆れて思わず言ってしまった。

「これくらいで?」

「これくらいって! 雷と暗いのが苦手とか……子供みたいじゃないですか」

「苦手なものに年齢関係ないだろ」

 雷は徐々に遠のいてきた。でもこれから時間が経つほど闇が深くなってしまう。

「気にしなくていいよ、そんなの。それより一人にさせなくてよかった」

(しかしどうするか。こんな北奥の倉庫、用事があるやつしか来ないよなぁ)

 そんなことを脳内で考えていると制服の裾が引っ張られた。

「すみません……これ以上近づかないので……も、持たせてもらっていいですか?」

 震える手がほんとに少しだけ裾をつかむ。


(この子は部下だ)


 頭の中でまずそう言い聞かせた。そう思わないと精神的に危ない気がした。
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