ゆびさきから恋をする
 震えながら必死で我慢しつつギリギリ甘えてくるその姿を見ていると自分の中に芽生えた気持ちを誤魔化せる自信がなかった。

(やばいな、こんな可愛かったか、この子)

 普段の勝気な姿はどうした。媚びることも懐く感じもしない猫みたいだったくせに、いきなりこんな風に弱みをみせるのか。


「……とりあえず、さ。電気が復旧したら自然に解除されると思う」

「え? 本当ですか?」

「多分、電気が回復すればリセットされて立ち上がると思う。技術ビルは電気管理されてる機器が多いから絶対に自家発電に切り替わるから電気はすぐに回復する、もう少し我慢して」

「はい……」

「怖いならもっとちゃんと掴まって。俺はいいから」

「……はい」

 そう言ってもこれ以上近寄ってこないんだろう、そう思っていたのに彼女は素直に俺の言葉に従った。

 ぎゅっと制服を掴んで一歩だけ身体を寄せてきた。

「ごめんなさい、もう少しだけ……我慢してもらっていいですか」

 そのセリフは隠そうとした心の奥を暴かれてしまったような気になった。

「……どうぞ」

 そう言った自分の声が情けないくらいに掠れてしまった。
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