ゆびさきから恋をする
 なにに驚いたって、触れられて何も嫌な気にならなかったことだ。

 あたたかい手。

 あの、長い綺麗な指が私の手首に触れて巻き付いている。それを見て胸が締め付けられた。
 

 ドアの前で頭を抱えた久世さんの気持ちとは裏腹に、私はただ掴まれた腕のことだけが気になってどうしようもなかった。

 決して強い力じゃない。でも、ギュッと掴むその手が熱くて、胸が苦しくなるばかり。

 体に力が入って思わず身じろぎすると、痛かった? と、熱が離されて……。


(そんなんじゃない)


 それも言葉にはならない、咄嗟に頭を振った。

 離されたら途端に不安になってしまった。暗闇がどうとかそんなことじゃなく、自分の気持ちにだ。


 こんなに近寄ってしまってどうしたらいいんだ。

 手を伸ばせば触れられる距離に今さら気づいて焦り出す。

 私はなにを久世さんにしでかしてしまったんだろう、その思いにただ焦った。
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