ゆびさきから恋をする
「ごめんなさい」

 とにかく謝った。

 迷惑をかけてしまった、なにより久世さんを困らせたことが嫌だった。

 でも、久世さんは私の恐怖心を笑ったりもしない。怖がる私をなんてことのないように受け止めてくれて、そしてそこに言うのだ。

 ”一人にさせなくてよかった”そんなセリフまで吐いてくる。

(そんなの言ったらダメじゃないですか?)

 心の中でそうつぶやいた。


 久世さんが無意識に発した言葉に胸を高鳴らせた自分がいて、いつからかどこか勘違いをしてしまったのかもしれない。

「すみません…これ以上近づかないので……も、持たせてもらっていいですか?」

 言ってから後悔したけど、もう遅い。久世さんの了解も得ずに制服の裾をまた掴んでしまう。


(困らせたくないなんてどの口が言うの)


 離さなきゃ、わかってる。

 でも――離せなかった。掴んでいたかった。


 この距離から――離れたくなかった。
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