ゆびさきから恋をする
 少し冷えてきて、雨のせいでだんだん室内も暗くなってきている。

 電気はすぐに回復しそうにない。雷は少し落ち着いてきた気がするけど、暗闇は苦手だ。小学生の時誤って体育倉庫に閉じ込められて一晩過ごしそうになったことがある。あの日のことはいつまでたっても忘れられなくて、その時感じた恐怖心と孤独をまた思い出した。

 でも今は違う。

(久世さんがいてくれる)

 心の底から思った。一人だったら、だけじゃない。

 ここにほかの誰がいるよりも安心できた。そう思ってハッとした。

 同時に、胸の奥に刺さったいつかの棘が疼いたのに気づいて困惑した。

 久世さんが何か考えているようにぶつぶつ言っていたがはっきり言ってほとんど耳には届いてこなくて。最後に自家発電に切り替わるだろうから回復するまでもう少し我慢して、と普段からは想像できないような優しい声で告げられてどこかホッとした。

(このままこうしていたら、おかしくなりそう)

 そう思っているのに、「怖いならもっとちゃんと掴まって。俺はいいから」またそんな優しい言葉を言ってくるから……。
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