ゆびさきから恋をする
 中村さんも木ノ下さんと同じ、私じゃなく派遣社員のフィルターを外してくれない。それなら胸がでかくていいなと思ってくれるもう一人の方がずっと誠実かもしれない。

(いや、全然誠実じゃないわ。なんだよワンチャンって)

 自分の思いに自分で突っ込んで虚しくなった。


 フラスコにつけてたチューブを抜き替えてエンターキーを押した。装置がくるくると回ってチューブが液を吸い上げていくのをぼんやりと見つめる。

 こんな風に規則的に動いて決められた通り測定を始める装置のように、一定のリズムで感情に振り回されずに仕事をし続けられたらいいのに。

 どうやったらもっとうまく気持ちをコントロールできるのだろう。

 何年働いたら消化できるのか、いや多分もう気づいている。

 年数じゃない、だってもう五年も働いてるのにこのしがらみは重くなるばかり。


 頑張ろうと思う日もあって。

 もう無理だと辛い日もあって。

 それを繰り返して月日だけが経っていた。結局、自分で自分を振り回している。


(しんどい)


 心の奥がもうずっとしんどい。

 重い錘を腹の底に埋められたようにしんどさだけが募っていく。いろんな人の何気ない言葉や態度がその錘をますます重くさせた。

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