ゆびさきから恋をする
 そんな気持ちが少し距離を作っている原因なのは自覚している。

 でもなぜ彼女も俺から距離を取るのか。近づいてこられても困るけど気にはなる。

 そしてもう一つ、日に日に彼女の表情が暗くなっているのが気になって、余計に無視できなくなっていた。


「でさ、問題はこれ。この作業手順ってさ、菱田ちゃんが作ってるんだよね」

「は? なんで?」

 高宮の話に我に返る。

「これは俺の推測だけど。雛型が品管のやつだからうちの課長が前の課長に頼んでてそれを菱田ちゃんが作らされてるんじゃないかなぁって。その頃開発部、環境ISO取るのに躍起になっててめっちゃバタバタしてた時なんだよな、多分。作れる社員がいなかったのか……とにかく言いたいのはさ、これは品管の仕事で開発の仕事じゃないってことだよ。意味わかるだろ?」

 (それはつまり……)

「……契約違反ってこと?」

 俺の言葉に高宮が肩をすくめて頷いた。

「今度監査が入る。社員の中に彼女の名前がないのにこの手順書を作った人間の名前があるのがちょっとまずい。そこ書き換えてくれる?」

「書き換えるって……作ったのは彼女だろ」

「んなことわかってるよ。てか、何? お前もわかっててそこごねるなよ」

「……」

(なんだよ……なんなんだよ、それ)
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