ゆびさきから恋をする
 高宮のいうことが理解できないわけじゃない。監査のため、それだってわかる、でも。

 湧き上がる感情がある。理不尽さが……立場が? 

 そんなもので、彼女の積み重ねた仕事をないものとするのか。俺が――俺の手で。

 黙ってしまった俺に高宮が伺うように聞いてくる。

「名前は残らなくてもやった実績は残る、それじゃダメなわけ? お前の名前で申請しなおすだけだよ。手順書はいじらない」

「……」

「久世ぇ、なにこだわってんの?」

「……わかった。申請しなおしてメールする。あとで確認して。それ一枚だけ?」

「それが何件かあるんだよねぇ。こき使われたんだなぁ、前の課長マジでなんも考えんと仕事させてたんだろ。かわいそうに」

 とりあえずよろしく、と高宮が出て行ってからため息がこぼれた。
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