ゆびさきから恋をする
 守りたかった。

 ただ彼女の傍で、誰よりも守ってやりたかったんだとやっと自分に素直になる。

「……なんでそんなに自分のこと馬鹿にすんの?」

「馬鹿じゃないですか、馬鹿ですよ! 自惚れて勘違いして馬鹿以外のなんなんですか?」

 自分をどんどん卑下して馬鹿にして……どうしてなんだ。どうして彼女自身がそんな風に自分を貶めないとならないんだと。

 自分を馬鹿にする彼女に本気で腹が立った。

「認められたい? 評価されたい? 誰にされたいんだ?」

「……え?」

(誰になんて言われたら納得できるんだよ。それは本当に他人に言われて満足できることなのか?)

「自分のことだろ? 意地でも割り切れよ、そんだけの仕事してて、なんでもっと頑張ってる自分を認めてやらないんだ」

 そう言えば彼女が息を飲んだのが分かった。

 涙をこぼすその瞳は大きく開き揺れていて、そんな瞳で見つめられるとたまらなくなった。

「もっと自惚れていい、勘違いじゃない、君はちゃんとここで仕事をしてる。その結果は実績と経験でちゃんと残ってる。仕事見てれば分かる、認めないヤツがいるなら連れて来いよ、俺が認めさせてやる」

「……もう……やめてください」

 そして震える声が言うのだ。

「……私なんかっ」

 そんな言葉……言わせたくない。そんな言葉は俺が一番聞きたくない。


(ふざけんな……)


 その思いで彼女の身体を引き寄せていた。

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