ゆびさきから恋をする
 さっきのキスを思い出して体が一瞬で硬直した。それを久世さんは察したのか。

 久世さんの唇が耳に優しく触れて、フッと小さな笑みが耳をくすぐる。温かな吐息が肌をなぞるとそれだけで全身が震えるのに優しい声で囁いてくる。

「こっち向いて」

 そう言って体を反転させられて……見つめられた。

「いちいち自分と派遣を結び付けて物事を決めつけるのはやめろ。そんなに派遣を切り離せないなら言うようにやめたらいい。それでもやめられないのはこの仕事が好きだからなんだろ? だから頑張ってきたんだろ? だったらそのまま受け入れて分析者としてもっと自信をもって仕事しろ。自分のしている仕事に今以上にプロ意識を持て。自分で派遣の線引きをして勝手に諦めるな」

「……」

 向き合って真っ直ぐに見つめながらそう言われたらまた目頭が熱くなる。

「自分のやりたい仕事をやりたいだけできるのなんか逆に派遣の特権だろ。もっと割り切って利用してやればいいんだよ。それくらい自分に(したた)かになれよ」

「……」

「仕事がしたいならいくらでもさせてやる。俺がここで上司としていれる間なら応えてやる。出来る出来ないは菱田さんが決めたらいい。でもやれないことなんかない。立場があったって自分が目指す仕事は出来るんだよ。やってること、なんにも間違ってない」

(どうして……どうしてそんな言葉を言うのよ……)

 久世さんの放つ言葉が私の胸に刺さってくる。

 痛いほどに、でもその痛みはどうしてって優しくて。私を救う言葉たちだ。
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