ゆびさきから恋をする
 優しい痛みで震える胸に久世さんは言うのだ。


「積み重ねてきたこと、もっと自信持てよ。頑張ってない、なんか言わせない。もっと頑張りたいって……そんなこと言うヤツのどこが頑張ってないんだよ」


(だめ……もう無理)


 涙が溢れ出す。

 溜め込んで、自分でも驚くほど。心の中に涙を溜めていた。でもそれを溢れさせることなどなかった。自分で飲み込んで落ち着かせてそうしてやり過ごしてきたから。

 でも一度溢れたらもうダメだ。しかもそれを自分以外の誰かが受け止めようとしてくれるのだ。

 欲しい言葉と一緒に……そのままでいいと言葉で包んでくれる。


 逃げたくなるほど弱くなった心に強い言葉を投げつけてくる。

 その言葉は胸の中にどんどん落ちてきてやがて私の心をいっぱいに締め付け始める。

 もう止められない。涙だけじゃない、胸から溢れるように気持ちが湧き上がって止めることなんかできない。


 久世さんが好き。


 きっとずっと前からもう好きだった。その思いに素直になったら涙が勝手に零れ落ちた。

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