ああ、今日も君が好き。
そんな彼女の笑顔にやられたのは俺だけではなかった。
「お、知り合いですか…?」
頬を赤らめたり、時折不思議そうに。
警察官は彼女が見吉家の人間だと知っているようだった。
「ええ、彼は私の友人です。彼から聞いていませんか?」
「本人はそう言っておりましたが…」
「では、何故彼を連れて行こうとしたのですか?」
「変質者がよく使う手口です。知り合いと嘘を吐けば見逃してもら…「変質者?」
彼女が言葉を発した瞬間、ゾクッと鳥肌が立った。
いつもと違う低い声に違和感を覚える。
警察官も何かを感じ取ったらしく、表情を引き攣らせて早口で話し始める。
「と、匿名で通報があったんです。見吉さんのお宅の前を不審な人物が彷徨いていると。だから自分は…っ」
「……成程、そう言うことですか」
時折、彼女の言葉が冷たく感じる。
いつもは笑顔を絶やさない表情も、今日は何だか仮面のように冷ややかに感じたのは気のせいだろうか。
「では、覚えて置いて下さい」
すると彼女は高々に声を上げた。
目の前にいる警察官にだけではなく、まるで近所の野次馬達にも聞こえるように。
「彼は私の大切な友人です。これからこの家で暮らすようになりますので、皆さん、よく顔を覚えて下さいね。そして二度とふざけた通報をしないように」
そして見せ付けるかのように、彼女は俺の腕に自分の腕を絡ませて俺の存在を周囲にアピールした。
「お願いしますね」
念を押すような彼女の力強い言葉に、警察官は青褪めた様子で「し、失礼しました…っ」とだけ言い残して帰って行った。
先程までいた近所の人達もいつの間にかいなくなっていて、見吉さんは「ごめんね」と言って俺の腕から離れてしまった。
残念………じゃなくて、謝らなければいけないのは俺の方じゃないか。