ああ、今日も君が好き。



「あ、柴田くん。もう片付けは終わった?」

「終わったよ。待たせちゃってごめん」

「ううん、私こそ急かしちゃってごめんね。丁度弟が帰って来たから早く柴田くんのこと紹介したかったの」



階段を降りてリビングに続くドアをスライドさせると、そこには見吉さん以外に男女二人の姿があった。
一人はソファーに、もう一人はダイニングの椅子に座って見吉さんの隣を陣取っていた。
彼等を見た瞬間、この二人が見吉さんの弟と妹だと言うことはすぐに分かった。
それと同時にその髪色に驚いた。
ソファーに座る弟の方はこちらに背を向けて座っているため顔は見えないが、一般的によく見掛ける茶髪だったので大して驚きはしなかった。
しかし問題は見吉さんの隣に座る妹の方だった。



……金髪って、派手だな。

学生でこの色って許されるのか?



見吉さんの妹は金髪のロングヘアに、派手な赤い口紅が印象的な女の子だった。
いや、女の子と言うより大人の女性って感じだな。
キリッとした目元と、はっきりとした顔立ちが大分大人びて見せた。
でも制服に身を包む彼女は間違いなく中学生か高校生のはずなのに、先程から何とも言えない威圧的なオーラを醸し出していた。



ふと先程の写真のことを思い出す。



まさか、あの写真って妹さんの物?

つまり、妹さんはヤンキー?

喧嘩上等ってこと?

確かにこの威圧感はそれっぽいものがあるけど…。



そんな妄想を繰り広げていると、不意に弟の方と目が合った。



「「………あっ」」



え、え、何で彼がここに…?



そんな疑問が脳裏に過ったのはきっと俺だけじゃない。
目の前にいる彼もまた俺を見て驚いたに違いない。
そして俺の存在を鮮明に思い出したことだろう。



「アンタ、あの時の…」



やっぱりか。

そりゃ初対面の人間に笑われたら忘れないよね、悪い意味で。


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