ああ、今日も君が好き。
改めて部屋を見渡すと、ベッドとラグだけの簡素な空間だが物が少ない分部屋が広く感じる。
しかもリビングは広いし、キッチンも風呂もトイレもホテル並みに綺麗だし言うことない。
今まで住んでいたボロアパートがうさぎ小屋のように感じてしまうほどの雲泥の差に内心動揺して「綺麗」以外の語彙が見つからなかった。
本当に、俺なんかがこんなところに住んでもいいのだろうか。
見吉さんは優しいから住むところがなくなった俺を放って置けなかったんだろうけど、本当は………いや、うん考えるのはやめよう。
折角あの見吉さんが親切心から申し出てくれたんだから厚かましいけど今回はその気持ちに甘えさせてもらおう。
今更違うところに行ったって迷惑には変わりないし、だったらこの機会を有効的に使って見吉さんの友達ポジションを確実なものにしよう。
見吉さんと一緒にいるためには友達でいるしかないんだから。
「さてと、とりあえず服でも仕舞いますか」
リュックから衣服を取り出して一旦ベッドの上に置く。
そしてベッドの下の引き出しを開けると、そこには一枚の紙が入っていた。
これ、写真か…?
好奇心から思わず手に取って確認すると、それはやっぱり写真だった。
しかし。
「え、ヤンキー…?」
その写真を見た瞬間、一昔前のヤンキー漫画を思い出させた。
何故ならそこに写っていたのは改造バイクに跨り特攻服を身に纏った十数人の男女の姿だったからだ。
……誰?
てか、何でこんな写真がここに入ってるんだ?
多分この家の誰かの写真なんだろうが…。
「………まさか」
この写真がこの家の誰かのものだとしたらこの中にその人物が映っている可能性が高い。
まさかとは思うが、見吉さんの弟ってヤンキーなんじゃ………いやいや、あの見吉さんの弟だぞ。
きっと絵に描いたような品行方正な優等生キャラに決まっているよ、多分。
じゃあ妹の方とか?……いや、それもないよな。
確かに写真には女っぽいのが三人写っているが、正直この三人のうち確実に女と分かるのは一人だけで見吉さんとは似ても似つかない。
しかも残りの女っぽい二人はゴテゴテの特攻服にケバケバのヴィジュアル系バンドのような厚化粧で、そのうちの一人は横顔だけではっきりと顔が分からない。
これでは判断のしようがない。でもあの見吉さんの妹がヤンキーのはずないし、こんな妖怪みたいな化粧をする必要もないはずだ。
でも、だったらこの写真に写ってる人達は誰なんだ?
「柴田くーん」
「、」
ビクッと、その声に無意識に肩が跳ねる。
まるで悪戯がバレた時の子供のようで恥ずかしい。
「どう?片付け終わりそう?」
見吉さんは階段の下から声を出しているようで、俺も普段より大きな声で答えた。
「お、終わったよ。今降りるからー」
「はーい」
安堵の溜息を吐いて、もう一度写真を見る。
………うん、見なかったことにしよう。
俺は元の場所に写真を戻して階段を降りた。