黒皇帝は幼女化した愛しの聖女に気づかない~白い結婚かと思いきや、陛下の愛がダダ漏れです~
「これから休憩に入らせていただいたてもよろしいでしょうか」
「え……ええ、もちろん」

 食器を下げるのはメイドがやってくれるし、特にカリーナの手を借りなければならない予定もない。このタイミングで彼女が昼休憩を取るのはいつものことだ。

「ありがとうございます。では、失礼いたします」

 カリーナは一礼した後、軽やかな足どりで寝室から出て行った。きっと幼なじみの彼に差し入れを持っていくのだろう。
 例の想い人は近衛騎士団に所属しているそうだ。月光露を集めたあの夜も、恋人の騎士にこっそり差し入れをした帰りだったそうだ。

 ロゼと別れたカリーナは、ロゼが無事に部屋に入るのを見届けようとこっそり後をついて行ったらしい。すると驚くことにロゼは木登りでバルコニーから部屋に入った。そのすぐ後に、怪しげな男達に皇后が運び出されるのを見て、大急ぎで警備に報告に走ったという。
 陛下がカリーナを私の侍女にすることを許可してくれたのは、その功績もあってだろう。

 カリーナがいなくなるとすぐに、陛下がひと口大にちぎったパンを口もとに持ってきた。

「もっと食べないと。体力が戻らないぞ」
「私はもう十分元気です。寝て食べてばかりでは逆に不健康だと思います。このままでは丸々と太ってしまいそうです」
「俺はおまえがたとえどんな姿でも愛せる自信がある。たとえ子豚になったとしてもな」
「子豚っ⁉ そ、それはちょっと……」

 そんなふうに言われたら、次は本物の子豚に転身しそうな気がしてしまう。

「冗談だ。でも不健康はよくないな」
「それでは――」

 自分で、と食器に手を伸ばしたところで、陛下が言う。

「じゃあ食べおえたら散歩に行こうか。外の空気を吸えば食欲も出るだろうからな」
「本当ですか! ありがとうございます」

 ベッドから出られるだけではなく、外に行くこともできるなんて!

 一気に気分が上昇した私に、陛下が「ほら」とスプーンを向けてくる。早く散歩に出たい私は、差し出された料理をせっせと食べることに集中した。

 空になった食器を見て満足そうな表情を浮かべた陛下。私が彼の思惑通りだったと気づいたのは、完食後しばらく経ってからだった。



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