黒皇帝は幼女化した愛しの聖女に気づかない~白い結婚かと思いきや、陛下の愛がダダ漏れです~
息を切らしながらがむしゃらに走る。もう自分がどっちに向かっているかもわからない。
こうしている間にも、もしかしたら体の命は尽きてしまっているかもしれない。
体が死んだら、〝この〟自分はいったいどうなってしまうの? やっぱり死んで……。
ずっと頭の片隅にこびりついていたのに見ないふりをしてきたことを意識し、ピタリと足が止まった。
「嫌よ」
しずくがポタリと絨毯に落ち、黒い染みを作る。それが自分の涙だと気づいた瞬間、今まで必死にこらえていた緊張の糸が弾けた。
わあわあと声を上げて泣きだしたら、近くのドアがガチャリと音を立てた。
「なんだ、子どもか」
聞き覚えのある声に顔を上げると、琥珀色の瞳がある。
陛下……!
思いも寄らない事態に目を見開いて固まる私を、陛下はひょいと私を抱えあげた。
「……っ!」
「いったいどこから迷い込んできたんだ。ここは遊び場ではないぞ」
言っている中身は私をとがめるものなのに、声色は優しい。驚いて止まっていた涙が、再び勢いよくあふれ出た。
「へ、へっ……へーかっ!」
胸にしがみついてわんわん泣きはじめた私に、陛下が驚いているのが身じろぎでわかる。
「親のところに戻れなくなったのか? 仕方ないな。知っていそうな者を今呼んでやるから」
なだめるように背中をポンポンと優しく叩きながら、陛下が「だれか」と言いかけた瞬間、私は慌てて顔を上げた。
「違います! 私は子どもじゃなくてオディ……うっ!」
瞬間、胸に鋭い痛みが走った。
何⁉ どうして……!
さっきまでいくら走っても全然なんともなかったのに。
「どうかしたのか⁉」
心配そうに陛下が声をかけてくれる。
どうにかして自分の正体と危機的状況を伝えなければと必死に口を開く。
「わた、し……オっ……ィリ、ぐっ……」
まるで心臓を握り潰されているかのような苛烈な痛みに、まぶたの裏にチカチカと閃光が走った。
「おい! どうした!」
もがき苦しみだした私に陛下が慌てているのが伝わってくるが、苦しさのあまり声どころか息もできない。陛下の声がだんだん遠ざかっていく。
助けて……。
心の中でそう唱えたのを最後に、私の意識はプツンと途切れた。
こうしている間にも、もしかしたら体の命は尽きてしまっているかもしれない。
体が死んだら、〝この〟自分はいったいどうなってしまうの? やっぱり死んで……。
ずっと頭の片隅にこびりついていたのに見ないふりをしてきたことを意識し、ピタリと足が止まった。
「嫌よ」
しずくがポタリと絨毯に落ち、黒い染みを作る。それが自分の涙だと気づいた瞬間、今まで必死にこらえていた緊張の糸が弾けた。
わあわあと声を上げて泣きだしたら、近くのドアがガチャリと音を立てた。
「なんだ、子どもか」
聞き覚えのある声に顔を上げると、琥珀色の瞳がある。
陛下……!
思いも寄らない事態に目を見開いて固まる私を、陛下はひょいと私を抱えあげた。
「……っ!」
「いったいどこから迷い込んできたんだ。ここは遊び場ではないぞ」
言っている中身は私をとがめるものなのに、声色は優しい。驚いて止まっていた涙が、再び勢いよくあふれ出た。
「へ、へっ……へーかっ!」
胸にしがみついてわんわん泣きはじめた私に、陛下が驚いているのが身じろぎでわかる。
「親のところに戻れなくなったのか? 仕方ないな。知っていそうな者を今呼んでやるから」
なだめるように背中をポンポンと優しく叩きながら、陛下が「だれか」と言いかけた瞬間、私は慌てて顔を上げた。
「違います! 私は子どもじゃなくてオディ……うっ!」
瞬間、胸に鋭い痛みが走った。
何⁉ どうして……!
さっきまでいくら走っても全然なんともなかったのに。
「どうかしたのか⁉」
心配そうに陛下が声をかけてくれる。
どうにかして自分の正体と危機的状況を伝えなければと必死に口を開く。
「わた、し……オっ……ィリ、ぐっ……」
まるで心臓を握り潰されているかのような苛烈な痛みに、まぶたの裏にチカチカと閃光が走った。
「おい! どうした!」
もがき苦しみだした私に陛下が慌てているのが伝わってくるが、苦しさのあまり声どころか息もできない。陛下の声がだんだん遠ざかっていく。
助けて……。
心の中でそう唱えたのを最後に、私の意識はプツンと途切れた。