【番外編】イケメン警察官、最初から甘々でした。
夕暮れの街をほんのりオレンジ色の灯が照らすころ、美香奈は真木弁護士、谷原弁護士と共に予約していた和食のお店へと入った。
落ち着いた照明と木の香りが漂う個室で、三人は食前酒を少し口に含んだ後、自然と昼間の出来事の話に移った。

「カフェで警察沙汰なんて、ほんとに大変だったね」
真木先生が苦笑いを浮かべながら労いの言葉をかける。

美香奈は軽く首をすくめ、「はい……もう、茨城署の方にも色々バレてて、気まずいです……」と苦笑を返す。

すると真木先生がニヤリと笑って、隣の谷原先生に話を振る。
「でも、知らない土地で彼が良い意味で知られてるって、ちょっと誇らしくない?」

谷原は、うんうんと頷きながら箸を進める。
「そうですね。僕が警察にいた頃は、まあ、今とは違っていろいろありましたよ。どろどろの恋愛沙汰とかね……既婚の警察官同士で内緒の関係とか」

「やめてください、怖い話みたいに!」と美香奈は即座に口を挟んだが、谷原は笑いながら続ける。
「今の若い警察官はモラル高いよね。あれ、なんて言うんだっけ、草食系男子?」

真木先生がふと美香奈を見やり、「で? 橋口さんとこの彼はどうなの? 草食? 肉食?」と、まるで女子会のように話を振ってくる。

「ちょ、ちょっと! 若い女子の恋バナじゃないんですから!」
そうツッコみながらも、美香奈は頬をほんのり赤らめ、口元に手を添えて小さく笑う。

「……どっちも、ですね」

その言葉を聞いたとたん、真木と谷原の中年弁護士コンビは、まるで青春ドラマでも見ているかのように目を見合わせ、
「やっぱりな!」「おおー!」と声をあげながら、肩を叩き合っていた。

美香奈はそんな2人の様子に呆れつつも、ふと胸の奥がじんわりと温かくなるのを感じていた。
出張も悪くない。そう思える、穏やかな夜だった。
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