エリート医務官は女騎士を徹底的に甘やかしたい
 私は騎士になりたての頃、父と兄を戦場で亡くしている。父も兄も私も騎士として魔物討伐の任務に行くことになり、そこで魔物に攻撃された。私は重傷を負い、兄は私を庇って死に、父も魔物を倒すことはできたがそのままかえらぬ人になった。
 報告されていた魔物とは違うより強い魔物が出現してしまい、騎士団は撤退することもできない状況になり魔物を倒さなければいけなかった。なんとか倒したものの被害は深刻なものだったが、そんな強い魔物を倒した父と貢献した兄は国から名誉の勲章をもらうことになる。

 だが、父と兄を一度に失い、娘の私まで重傷を負ったことで母は錯乱し、それ以降何度も私に騎士をやめるように強く勧めてきたのだ。だけど、私は騎士をやめたくなかった。やめてしまったら、守ってくれた兄の死も、魔物を倒した父の死も、無駄になってしまうような気がしたから。二人は騎士でいることをいつも誇りに思い、騎士として命を全うしたいと言っていたのだ。
 そんな二人を私はずっと尊敬していたし、だからこそ二人のあとを継いで騎士を続けたいと思った。そして、それを貫いたことで、母は私を捨てた。

 騎士である私を見ることで、母は父と兄を思い出し、辛くなるのだろう。私と縁を切って、騎士とは全く関係のない貴族と再婚して、今は幸せに暮らしているようだ。だから、私はそれ以来ずっと一人で生きてきた。

「そうか……でも、もう大丈夫だ。ここは夢じゃない。それに、俺がいる」

 そう言って、ガイアは私を優しく抱きしめた。当時すでに医務官だったガイアは私の過去を知っている。昔の夢を見たと聞いて、おそらくガイアはなんの夢だったのか気づいているんだろう。

「ガイア、私、汗臭いよ」

 慌てて離れようとしたけど、ガイアは力を緩めてくれない、むしろ強く抱きしめられてる。

「そんなのどうだっていいよ。今はニーナを安心させたいんだから」

 そんなこと言われたら、私は弱くなってしまう。でも、ガイアに抱きしめられていると本当に安心する。ガイアの腕の中、あったかくて気持ちがいい。ガイアは私の背中をトン、トン、と優しく叩いてくれる。そのリズムも心地よくて、なんだか心が一気にほぐれていく。
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