【ピュア青春BL】幼なじみの君と、ずっとミニトマトを育てたい。
「綿谷、今年はまだミニトマトの苗しか準備してないんでしょ?」

 カーネーションをプレゼント用の袋に入れてもらっている時、律くんが野菜の苗コーナーに視線を向けながら言った。

「何で分かったの?」
「だって、天気の良い日に外に出してるのがミニトマトだけだったから……」

「まだ実がなってないのにミニトマトだって、良く分かったね」
「分かるし。それに綿谷、ミニトマトって呼んで話しかけてたから気になっ……いや、なんでもない」

 今、気になってって言おうとした? 僕のことが?
 というかいつの間にか見られていて……。
 僕のことを視界に入れてくれていたんだ。

「苗も色々売ってるよ。見ていく?」

 僕の頭がごちゃごちゃモードになりかけた時、律くんが僕の返事を待たずに先に歩いて苗のところに向かっていく。お会計を済まし、「ちょっと他のも見るので置いといてください」と、店員さんに一声かけると律くんの後についていった。律くんはきゅうりの前で止まったから僕も横に並ぶ。

「このきゅうり、しっかりしてる苗だなぁ。買っていこうかな」

 いちばん元気で色艶の良い苗と目が合って、僕はそれを手に取った。たまにある、こういう相性が良さそうだなって感覚はとても大切だと思う。すると律くんが僕の持っている苗に手を伸ばした。

「俺が持ってる。花とかも見るしょ?」
「うん、色々あるから見たい。でも、僕が持つから大丈……」

 話の途中で律くんは僕が持っていたきゅうりの苗を優しく奪った。

「あ、ありがとう。律くん。僕、お花を見てくるね!」

< 32 / 105 >

この作品をシェア

pagetop