【ピュア青春BL】幼なじみの君と、ずっとミニトマトを育てたい。
 律くんは静かに僕を見つめ、飲み物を持ったまま、微動だにしない。部屋の中はさっきから小さく聞こえている鳥のさえずりだけが響く。気まずさが胸を締め付ける。

 勝手に覗いたこと、謝らなきゃ。でも何て言えばいい――?

「由希くん……それ、俺の大切なものが入っている箱」

 律くんの声は、いつもより少し柔らかかった。律くんは少しだけ目を細めて、口の端をほんの少し上げている。

――笑ってる?

いや、いつものクールな律くんと変わらないかな。でも、どこか温かい雰囲気が漂っていて、僕の緊張が少しだけほぐれる。

「これ、まだ好き?」

 律くんはそう言うと、いちごミルクのパックを僕に差し出してきた。パックの表面には小さな水滴がついていて、冷蔵庫から出したばかりのひんやりした感触が手に伝わる。律くんが僕の好みを覚えていてくれたことに、胸がじんわり温かくなる。

「うん、好き。ありがとう……」

 僕はパックを受け取り、ストローを刺す。甘酸っぱいいちごの香りが鼻をくすぐり、ひと口飲むと、甘い味が口いっぱいに広がる。小さい頃、律くんと一緒に駄菓子屋で買ったいちごミルクを飲みながら、公園で笑い合った記憶がふっとよみがえる。僕はその頃、いつもいちごミルクを手に取っていた。

 あの頃は仲がよくて、気まずい空気なんてひとつもなかったのに。いちごミルクのようにパステルピンクのような思い出だ。

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