【ピュア青春BL】幼なじみの君と、ずっとミニトマトを育てたい。
 俺がトマト嫌いだという話を知ってから由希くんの様子が違う。こうなった原因は自分だし、最近仲直りしたけれど距離がある期間は長かった。由希くんにとっての俺は、ただの友達でそれ以上でもそれ以下でもない。自分が由希くんにとって一番ではない現実。当然だろうと思いながらも悔しさが込み上げてきた。

「安倍たちはサッカーする? 律と俺はするよ」と、袴田は言った。勝手に決めるなよと思いながらも、それは今どうでもよく。それより今は由希くんが気になりすぎた。

「袴田くん、杉山くんと僕と三人でサッカーしようよ。綿谷くんは光田くんとふたりで湖にあるスワンボートに乗りたいんだってさ」と、安倍が言う。

 由希くんと俺は同時に安倍を見た。

「えっ、安倍くん、僕そんなこと一切言ってないよ。僕、ひとりで散歩してくる」

 由希くんはそう言うと、荷物を速攻で片付けて歩いて行ってしまった。

「今の話は嘘なんだけど……ふたりでゆっくり話をしておいで」と、安倍は俺に耳打ちした。由希くんは今、俺とのことを安倍に話したのかもしれない。そして安倍は気を使い――。

「安倍、嫉妬してごめん」
「えっ、僕、嫉妬されてたの?」

 俺は由希くんのいそうな場所に向かった。

 実はスワンボートも計画のひとつにあった。だけど由希くんが一番さまよいたいだろうなと予想していた場所。それは――。

 由希くんを見つけた。
 由希くんは色鮮やかなラベンダーの花畑の前でしゃがんでいた。

「由希くん!」

< 66 / 105 >

この作品をシェア

pagetop