【ピュア青春BL】幼なじみの君と、ずっとミニトマトを育てたい。
「律くん、泣いてるの? 大丈夫?」

 由希くんの声で現実に戻る。頬の辺りで涙の生温かい感触がした。
 
「色々、思い出しちゃって」
「これ、涙を拭いて?」

 引き出しの中からフワフワな水色のハンカチを出して貸してくれた。由希くんからいつもしている甘い香りがしてきて、ハンカチさえも愛しくなる。由希くんは心配そうに眉を下げ、じっとこっちを見つめている。
 由希くんに涙なんて見せてしまった。かっこ悪いな……と、考えながら、呼吸を整えてみる。しばらくすると、話せるくらいに落ち着いてきた。

「由希くん、本当にありがとう。指輪、大切にするね」

 由希くんは「うん」と頷き、微笑んだ。
 俺も笑顔を返す。由希くんだけに見せられる笑顔を。

「それにしても、律くんの指輪のサイズ、ぴったりで良かった」
「そういえば、よく俺の指輪のサイズ分かったな?」
「実はね、安倍くんに協力してもらったの」
「そうだったんだ……安倍……」

 どうやって協力してもらったのだろうか?
 考えていると、ふと、ある出来事が頭によぎった。

「……もしかして少し前に学校で、昼休みに手相見てやるとか、安倍に急に言われた時か?」
「そう、それ!」
「手相見終わったあとに、薬指摘んで何かをチェックしだしたから、何だ?って思ってたら、そういうことか――」
「そうなの。その時、僕は近くでソワソワしてたよ」

 あの時の光景を思い出す。「いい運命だね」とか言いながら安倍が俺の薬指を触りだして、安倍の指も横に並べて何かを比べているようだった。不自然だなとは思っていたけれど……。あんまり占いを信じていなかったけれど、安倍が由希くんの手相も俺の後に見て「綿谷くんの恋愛運はこれから爆上がり。思い合っている人とうまくいく」と言っていて。そこだけ過剰に反応して、信じたいと思ってしまった。

「そっか、安倍は色々知ってたんだな?」
「うん、男の子同士だからとか全く気にしないで、僕たちが上手くいくようにって、応援してくれていたよ」

 応援してくれる人もいるんだ――。

「応援か……」
「そういうの、嬉しいよね!」

 由希くんはふふっと笑う。

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