チャラい社長は私が教育して差し上げます!
社長について
終業の時刻になると、私は周囲に「お先に失礼します」と言って職場を離れた。担当の社長が帰ったのに、私だけが残業する意味も業務も無く、従ってとやかく言う人は誰もいなかった。

急いで私服に着替え、1階のロビーに降りると、既に恵子はいて私を待っていた。

「お疲れ!」

「いつもの居酒屋さんでいい?」
「いいよ。行こう行こう」

という事で、私達はよく行く、会社から程近い居酒屋さんへ向かって行った。

桜は満開で、顔に当たる夜風が心地良い。そろそろコートは要らないかな。

「どう? 秘書課は大変?」
「大変は大変だけど、色々あってさあ。恵子に聞いてほしいと思ってたの」

「そっか。じゃあ今夜はそれを肴に、じゃんじゃん飲みましょう!」

「おーっ!」

恵子も私も、かなりお酒が好きだ。もちろん話は合うし。


「かんぱーい!」

お馴染みの居酒屋さんへ入り、慣れた奥のテーブル席に向かい合わせで座ると、まずは生ビールで乾杯した。

「ハアー、美味しい!」

2人とも中ジョッキの3分の1程を、ゴクゴクと喉に流し込んだ。ビールはこの一口目が一番美味しいと思う。

店員さんに、お刺身、お新香、焼き鳥、冷やっこなどを注文し、私が先に口火を切った。

「秘書ってさ、それぞれ担当の役員が決まってるんだけど、私の担当は……」
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