チャラい社長は私が教育して差し上げます!
私はそこで言葉を切り、わざともったい付けた。

「誰だと思う?」
「そんなの、私が知るわけないじゃん。平取の3~4人じゃないの?」

「私もそう思ってた。新米だからね。ところがね、なんと…………」

「なんと?」
「社長なのだよ」

と言って、私はドヤ顔をした。ところが、

「あー、そうなんだ。なるほどね……」

恵子の反応は薄く、私の予想の真逆だった。
私が予想した恵子の反応は、『えーっ、うっそー! 信じらんなーい』みたいなものだったから。

「何でそんなに薄い反応なのよ?」
「だって、社長は”あの”神徳直哉さんでしょ? だからよ」

「それはどういう事?」
「どうせダメダメな社長だから、新人にやらせとけばいいや、って事でしょ?」

「それは少し違うの。私が担当になったのは、社長のご要望なのよ」

「要望って?」
「20代の女性。秘書課では私しかいないから」

「じゃあ、同じ事でしょ?」
「なんでよ?」

「普通は、そんな我儘は速攻で却下でしょ? それをしないって事は、担当は新人のあんたでいいやって事だから、一緒でしょ?」

「確かに」

課長が言った『普通は』って、そういう意味だったのか。それはそうと、

「恵子って、社長の神徳直哉さんを、知ってたの?」
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