チャラい社長は私が教育して差し上げます!
「あの、メールなんですけど、私用はお控え戴きたいかと……」

「はあ? じゃあ、どうすりゃいいんだよ?」

「プライベートのスマホを使ってください」

「ん……女にラインとか私用のメアドとかは、教えたくないんだよなあ」

私は『ガッちゃん』の事を言ったのになあ。『明美ちゃん』とか『紗耶香ちゃん』の事ではなく。

ああ、そうか。『ガッちゃん』って女の子の名前なのね。変な名前だけど。

「なるべく使わないようにするよ。そんな暇は無いしな」

「お願いします」

「では、失礼します」と言い、今度こそ社長室を出るべくドアノブに手を触れたら、背後で「あのさ」と社長が言った。

私が振り向くと、

「今日は出掛けて帰って来ないから、よろしくな?」

と、社長は言って私に手を上げた。事もなげに、軽い調子で。

声は低い方のそれだけど、言動がチャラい。やっぱりこの人、基本はチャラ男だと思う。

私はずんずんって感じで社長の前に戻った。

「社長、勝手な行動は困ります。どちらに行かれるのか、秘書である私にお伝えください!」

「言わないとだめなのか?」

「当然です」

「工場だよ」

工場? 嘘臭いなあ。

「『ガッちゃん』に、会いに行くんじゃないんですか?」

まさかとは思ったけど聞いてみた。いくら社長がチャラいとは言え、女の子に会いに行くとは、さすがに私も思ってはいなかった、のだけど……

「よく解ったな?」

はあ?
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