チャラい社長は私が教育して差し上げます!
「社長はさっき、工場へ行くって言ったじゃないですか。嘘だったんですか?」

「嘘じゃないさ」
「じゃあ、『ガッちゃん』は工場で働いてるんですか?」

「まあ、そうだな。あまりそういう言い方はしないが」

「仕事なんですよね?」
「もちろん」

「では、私も行きます」

少し考えてから私はそう言った。社長が出掛けると私の仕事は殆ど無いし、メールのチェックは外出先でも内線携帯で十分出来る。

そして何より、本当に仕事なのか、私はこの目で確かめたい。

「行っても、つまらないぞ?」
「構いません」

「じゃあ、行くか? ドライブにはなるしな」

ドライブって、ああ、そうか。

「では私は、配車の手配をしますね」
「いや、それはいい。俺の車で行くから」

「社長って、マイカー通勤してるんですか?」

「古臭い言い方だが、そうだよ。30分後に出発でいいかな?」

「承知しました。私は私服に着替えた方が良いですか?」

「そうだなあ。その姿は魅力的だが、直帰するから私服がいいだろうな」

「承知しました。では、30分後に」



許可をもらうべく課長にこの事を告げると、

「工場ねえ。本当に仕事なのかしら」

課長には『ガッちゃん』の事は言ってないけど、それでも社長を疑っていた。あの社長では、無理もないと思うけど。

「社長はそう言ってました」

「ま、いいわ。ホワイトボードに書いておいてね?」

「はい」

私は、秘書課メンバーの予定を書くホワイトボードに、内容は『社長に随行』、帰社は『NR』つまり直帰と書いた。

ふー。お出掛けかあ。なんか楽しみ。
< 25 / 104 >

この作品をシェア

pagetop