チャラい社長は私が教育して差し上げます!
私は不意に、ある事に気が付いた。

「社長は、『ガッちゃん』に会うために予定を入れないんですか?」

「そうだ。よく気付いたな?」

褒められても嬉しくない。私は正直なところ、呆れてしまった。女の子に会うために、社長の業務を蔑ろにするなんて。

「本当は役員会もサボりたいんだが、親父がそれだけは出ろと煩いんだ」

前社長が言う事は当然だと思う。むしろ甘いぐらいだわ。

私は『ガッちゃん』がどれ程魅力的な女性なのか、俄然興味が沸いて来た。


私達を乗せたR2020は、高速道路に乗り、南へ向かって走っていた。

「まだ着かないんですか?」
「あと1時間ぐらいかな。寝ていいぞ」

「いいえ、大丈夫です」

とは言ったものの、春の日差しが暖かくて、私はつい、うとうとしてしまった。


「舞、着いたぞ」

社長の声で私は目を覚ました。うとうとどころか、本格的に眠ってしまったみたい。

ガルウィングのドアって、どうやって開くんだっけ。それ以前に、シートベルトが外せない。シートベルトとカチャカチャ格闘していたら、外から社長がドアを開け、私のシートベルトを外してくれた。

その時、社長の顔が私のすぐ目の前に来て、彼の息が私の顔に掛かかると、私の心臓はドクドクと早鐘を打っていた。

車高が低すぎて、私は足を外に出したものの、立ち上がるのに難儀した。すると社長がすっと手を差し出したので、私はその手を取り、社長に引き上げてもらった。

「どうもすみません」
「いいって」

社長の手は、意外にもごつごつしてて、力強かった。

車から出ると、そこは工場の敷地内だと思うけど、満開に咲く桜の花が、とても綺麗だった。
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