チャラい社長は私が教育して差し上げます!
すると社長は、人差し指を立てて「ちっちっちっ」と舌打ちした。

「鋭い指摘ではあるが、舞は甘いな」
「イカより甘いですか?」

「なぜイカが出て来るんだ?」
「あ、すみません。昨夜イカのお刺身を食べたので、つい……」

もう……昨夜の恵子の口振りが私にうつっちゃった。恥ずかしいー。

「何が甘いんですか?」
「イカだ」
「…………は?」

「コホン。冗談はやめて真面目に話そう。ブランデーやウィスキーではコスパが悪過ぎる。ガソリンより高いからな」

「確かにそうですね。焼酎にしてもまだ高いと思います。でも、それを言ったらオリーブオイルも高いですよね? 特にエクストラバージンオイルとかは……」

「真っ当な指摘だな。オリーブオイルはテストとプレゼン用だ。我々の真の目標は廃油なんだ。身近なところでは、例えばフライを揚げた後の油だな。あれで車が走るのを想像してみてくれ」

私は、フライを揚げた油をジョッキに移し、車のガソリンタンクに注入する光景を思い浮かべた。

「社長、揚げカスは濾さなくて良いんですか?」

「濾してくれ。シリンダーにカーボンが溜まる」

「承知しました。……想像出来ました。素晴らしいと思います」

「だろ?」
「プレゼンは廃油でした方がインパクトがあると思います」

「そうか? オリーブオイルだと聞こえがいいと思ったが、そうかもしれないな。しかしテストはオリーブオイルでやる。廃油は品質が一定しないから、テスト向きではない」

というような話をしていたら、奥の鉄の扉が開き、中からぞろぞろと大勢の人が出て来た。
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