チャラい社長は私が教育して差し上げます!
私には、触媒や超合金の話はさっぱりだけど、資金が足りないという事だけは理解出来た。

「あのー、資金があれば、経営統合に間に合うんですか?」

私は誰にともなくそう言うと、

「たぶん間に合うだろう」

と榊さんが答えてくれた。

「その場合、経営統合を阻止出来ますか?」

「その必要は無くなるだろうな」

と社長が言ったので、その社長に向かい、

「だったら、予算を増やしてもらいましょうよ」

と私は言った。

「俺がか?」
「そうです。社長は先ほど、”上の奴ら”と仰いましたよね? その頂点にいらっしゃるのは、社長じゃないんですか?」

「そう言えばそうだな」
「そうっすね」

「いや、俺はスポットだから」

「スポットでもスポックでも、社長は社長です。経営会議を招集して、予算を計上すればいいじゃないですか?」

「お、おまえ、簡単に言うけど、俺はそういうのが一番苦手なんだ」

バン!

私はテーブルを叩き、立ち上がった。手の平がジンジンしたけども。

「会社の命運がかかってるんですよ!」

「そんな、大袈裟な……」

「大袈裟じゃないっす。H社はEVに百パー傾いてるから、内燃機関の開発は潰されるっす」

あ。恵子の想像通りだ。恵子ってすごいわ。

「私は全力でサポートしますので、やりましょう、社長!」

「わかったよ。やってみよう」

ふーっと息を吐いて座った私に、斯波さんが話し掛けてきた。

「舞さん、俺もあの映画、好きっす」

私がさり気なくかましたジョークに、斯波さんだけは気付いてくれたみたい。
< 34 / 104 >

この作品をシェア

pagetop