チャラい社長は私が教育して差し上げます!
聡が部屋のドアに鍵を差し込んでるところなんだけど、彼の横に若い女の子が立っていた。私は知らない女の子だ。

そして、聡は部屋のドアを開くと、周りをきょきょろ見て、素早く女の子の肩を抱き、二人で部屋の中へ入って行った。

聡って、私がいない間、あんな事をしてたんだなあ。私にはゲーム以外は何も興味がない、みたいな態度なのに、陰であんな事してるんだ。気持ち悪い。

私は背中に悪寒が走り、ブルっと身震いした。

「今の、おまえの彼氏か?」
「はい。元彼氏です」

「もう”元”が付くのかよ?」
「あんな奴、とっくに彼氏なんかじゃないです」

「無理すんなって。泣いていいんだぞ?」

「泣くわけないじゃないですか。むしろスッキリしました」

私はそう言い、社長に笑顔を向けた。ちゃんと笑えてるかは、わからないけど。

「これからどうする?」

どうしようかなあ。先ずはどこかでご飯を食べて、その後はネットカフェかな。

もう、あの部屋には戻れない。戻りたくない。今まで、何も知らずにあそこに住んでたと思うと、おぞましかった。

「俺んちに来いよ?」
「え?」

聞き違いだろうか。

「空いてる部屋がいくつかあるから、俺んちに来いよ。な?」

聞き違いではなかった。でも、すんなり『はい』とは言えるはずもなく……

「社長にご迷惑は掛けられません」

「迷惑じゃねえよ。一人で退屈してるから、むしろ歓迎するぞ」

「でも……」
「弱ってる女を襲ったりしないから、心配すんな」

そういう心配はしなかったけど、するべきなのかな。

「じゃあ、決まり。行くぞ。先ずはどこかで飯を食おうぜ?」

私が返事をする前に、車は走り出してしまった。

「泣いていいんだぞ?」
「泣きません!」

社長が楽しそうに見えるのは、私の気のせいだろうか……
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