チャラい社長は私が教育して差し上げます!
社長がリモコンで窓のカーテンを開くと、途端にキラキラ光る夜景が目に飛び込んで来た。

「うわあ、綺麗ですね!」
「まあまあだろ? もっと上なら良かったんだが、失敗だったかな」

「いえいえ、十分綺麗だと思います」

「そうか? 風呂場とかを案内するよ」

そう言われ、私は社長に付いて行った。

「ここも、そっちも使ってないんだ」

と言って社長はひとつの部屋の扉を開き、パチッと照明を点けたのだけど、中はがらんどうだった。

「これじゃ今日は使えないな」

あら?

確か社長は『空いてる部屋があるから』と言っていて、私はてっきり今夜使わせていただくものと解釈したのだけど、違ったのかしら。もしかして、私に引っ越して来いという意味だったのかな。さすがにそれはないか。

「ベッドもないし」

え?

「社長」
「ん?」

ああ、聞きにくいなあ。でも大事なことだから……

「えーっと、ベッドはどこにあるのでしょうか?」

「普通は寝室だよな」
「いくつ、あるのでしょうか?」

「ひとつだけど?」

やっぱりかあ。

「予備の布団とかは……」
「ない」

「そうしますと、私はどこで寝ればよろしいのでしょうか?」

「俺と一緒でいいんじゃないか? ベッドは大きいし、俺は襲わないし、何も問題はないと思うぞ」

大いに問題だと思いますけど?

「いえ、それはちょっと……あ、リビングにソファがありますよね? 私はそこで寝かせていただきます」

「そんなんじゃ疲れが取れないぞ」
「大丈夫です」
「そうか」

ふー。社長と一緒に寝たのでは、それこそ疲れが取れないと思う。それ以前に、眠れるかどうかも怪しいと思う。
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