チャラい社長は私が教育して差し上げます!
「トイレはそっちで、風呂場はここだ」

社長はそう言って、パチンと明かりを点けてお風呂場の扉を開いのだけど、とても広かった。バスタブも大きくて、これならゆったり入れそうだ。

あ、女物のシャンプーとかリンスとかが並んでる。きっと『明美ちゃん』もしくは『紗耶香ちゃん』が使ったんだろうな。

「速攻で湯を張っとくから」

「お風呂をお借り出来るんですか?」

「もちろん。おまえもそのつもりだろ?」

と社長は言い、私が手に提げたままのコンビニの袋に目をやった。

「そ、そうでした」

私ったら、恥ずかしいなあ。

「そこに降ろしとけば?」
「はい」

「着替えはどうする? 女物のスウェットとかあるけど、着るか?」

「『明美ちゃん』もしくは『紗耶香ちゃん』のですよね?」

「いや、違う女のだけど?」

「着ません!」

社長の女ったらし!

「だったら、俺のでいいか? おまえにはデカいと思うが」

「は、はい。着させていただきます」

「じゃあ、ここに置いとくから」

「あの、お風呂は社長が先に入ってください」

「俺は後でいいよ。おまえはお客さんだから、先に入ってくれ」

「でも……」
「社長命令だ」
「あ、はい」

「あっちで待っててくれ。テレビでも見ながら」

「わかりました」

窓際の椅子に座り、外の夜景を眺めていたら、私のスマホに着信が来た。聡からだ。聡の番号を着信拒否するのを忘れていた。

少し迷ったけど、私は電話に出る事にした。

「もしもし」
『舞か? ライン見たよ。そんなに怒る事はないだろ?』

「怒って当然でしょ?」
『どうせ俺達は単なる同居人なんだからさあ、俺が彼女を作っても構わないだろ?』

「それは構わないわ。でも、部屋に連れ込むのは許せないの。私のアパートなのよ?」

『そんな堅い事言うなよ。ここを解約するって、本気か?』

「本気よ。だから、早く出て行ってくれる?」

『俺はどこへ行けばいいんだよ?』

「知らないわよ。あの女の子にでも頼めば?」

『そんなあ……』

「もう二度と電話しないでね。ばいばい」

私は通話を切り、すぐに聡の番号を着拒した。

その直後、社長が戻って来た。社長は白のスウェットと、同じく白のTシャツに着替えていた。社長は白がお好きみたい。

「元カレから電話か?」
「はい。着信拒否を忘れてました」

「泣いていいんだぞ?」
「泣きません!」

もう、社長ったら、しつこいんだから……
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