チャラい社長は私が教育して差し上げます!
私が窓際の椅子に座ってスマホを見ていたら、社長が缶ビールを持って、お風呂から戻って来た。湯上りで少し上気した社長の顔を見て、セクシーだなあと私は思った。

「あれ? 舞は何も飲んでないのか?」

「社長が戻られるのを待っていました」

「ふーん。缶ビールでいいか?」
「はい」

「じゃあ持ってくるよ」
「いえ、自分で……」

と言って私が立ちかけると、

「いいって」

と言って社長は私の肩を手で押さえた。

「すみません」

社長は自分の缶ビールを小さなテーブルにコトンと置き、冷蔵庫の方へ行った。

私は、肩を押されただけなのに、その部分が熱を帯びたように感じ、胸がドキドキした。

やっぱり私は、ソファで寝なくっちゃ。自分のためにも。

今私は、窓際の小さなテーブルを挟み、社長と向かい合わせに座っている。そして夜景を見ながら、缶ビールをゴクゴクと飲んだ。

やはり湯上りのビールは最高に美味しいと思う。

「おまえって、酒は好きみたいだな?」

「はい。社長はどうなんですか?」

「俺も好きだよ」

社長はそう言って、私をじっと見た。それを私の脳は、『俺もおまえが好きだよ』と勝手に変換してくれて、顔がカーッと熱くなってしまい、それをごまかすために缶ビールをグイっと飲んだ。

おっと、呆けている場合じゃないわ。社長に言わなくっちゃ。

「社長は、普通のスーツはお持ちですか?」

「持ってるよ。このところは着ないけど」

「明日からは普通のスーツを着て頂けませんか?」

「なんで? スーツは窮屈で嫌なんだよなあ」

「ガッちゃんの予算獲得のためです」

私が『ガッちゃん』を口にすると、社長は途端に表情を硬くした。

「わかった。そのためなら我慢する」

よし。この勢いでもう一つも言ってみよう。

「それと髪の毛も……」
「わかった。ただし、真っ黒は勘弁してくれ」

確かに、社長に黒髪は似合わない気がする。

「茶色でいいと思います」

「わかった。明日は忙しくなるな?」
「そうですね」
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