チャラい社長は私が教育して差し上げます!
スマホで時刻を確認したら、出社には十分間に合う時刻だった。と言ってもそれは昨日までのアパートでの事であり、この社長のマンションからではどうなのだろう。

「社長。ここから会社まで電車でどのくらい掛かるんですか?」

私はまだベッドにいる社長に聞いてみた。

「ん……俺はあまり電車で行かないから、分からないなあ。電車で会社に行くのか?」

「はい。今日は始業時刻の1時間前に出社したいんです」

「秘書ってみんなそうなのか?」

「そうらしいです」

「ふーん、大変なんだなあ。どうするかな……」

と言いながら社長は壁の時計を見ていた。

「所要時間はスマホで調べるので大丈夫です。最寄の駅はどこになりますか?」

と聞いたのだけど、なぜか社長の返事が無い。

「駅まで歩いて何分ぐらい掛かりますか?」

と続けて聞いたら、

「よし、1時間後に出よう?」

は?

”1時間後に”は解るけど、”出よう”って何?

「もしかして、社長も私と一緒に出社される、という意味ですか?」

「そうだけど?」

「R2020で、ですか?」
「もちろん」

「社長にそんなご無理はさせられません」

「気にすんなって。少し早く出るぐらい、何でもないさ」

「そうですか。では、お願いします」


出掛けるまで時間があるので、キッチンで社長とモーニングコーヒーを飲んでいる。

「社長は、朝ご飯は食べないのですか?」

「ああ、食べない。コーヒーを飲むだけだ」

「健康に良くないと思います」
「そうか?」

「なんでしたら……」

しまった。『なんでしたら、私が朝ご飯を作りましょうか?』って、言いそうになってしまった。私は、もうすぐ此処を出て行く身なのに。

「”なんでしたら”の続きは何だ?」

「何でもありません。つい口が滑りました」

「もし、”私が朝ご飯を作りましょうか?”だったら、ぜひお願いしたい」

え?
< 43 / 104 >

この作品をシェア

pagetop