チャラい社長は私が教育して差し上げます!
社長って、人の心を読む特技も、お持ちなのかしら?

でも、正確には読んでいないと思う。だって、社長が言ったのは今日これからって意味だと思うから。私が思ったのは、明日から、だから。

「材料があれば、急いでお作りします」

「いや、今日は材料も時間も無いから、明日からお願いしたい」

え? 社長は今、『明日から』って言った。つまり、社長の”読み”は正確だったんだ!

「私は、一晩だけご厄介になるつもりでした」

「そうなのか? ちゃんと言わなくて悪かった。俺が舞を招いたのは、此処に住まわせるためだ」

やっぱり『部屋が空いているから』って、そういう意味だったのか。

「でも、そんな図々しい事は……」

「おまえ、あのアパートに戻れるのか? 俺なら嫌だけどな」

「私も……嫌です」
「だったら決まりだ。後で荷物を取りに行かないとだな?」

「でも……」
「社長命令だ!」

「は、はい。承知しました!」
「よろしい」

本当にいいのかなあ……


社長は白のワイシャツと、グレーのスーツを着込んだ。ネクタイは、首が窮屈だからどうしても嫌らしい。

髪が金髪なので、それこそホストのように見えるけど、髪を茶色に染めれば、完璧なビジネスマンになる、と思う。たぶん。


会社に向かう途中、コンビニに寄ってもらい、朝食用にハムサンドと野菜ジュースを買った。それは会社に着いてから食べる予定だったのだけど、車の中で食べる羽目になってしまった。

「社長、遅刻しちゃいますよー」

「ごめん。いつもより1時間半早く出たんだが、道路がこんなに渋滞するとは思わなかった」

既に始業時刻の1時間前出社は諦めたけど、せめて始業時刻には間に合ってほしい。でないと、篠崎課長が……怖い。

明日からは電車で出勤しようっと。
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