チャラい社長は私が教育して差し上げます!
社長の変貌
会社へは、なんとか遅刻しないで着く事が出来た。

大急ぎで制服に着替え、篠崎課長に
「おはようございます。遅くなってすみません」

と言ってお辞儀したのは、始業開始の1分前だった。

「おはよう。遅刻じゃないんだから、謝る必要はないわ」

課長は壁の時計を見ながらそう言った。「ギリだけどね」と言い添えて。

私が社長のコーヒーを淹れるべく給湯室へ行き掛けたら、「朝倉さん」と課長に呼び止められた。

「はい、何でしょうか?」

「社長、少しはやる気が出たみたいよ?」

課長は、声を潜めてそう言った。一瞬、何の事かなと思ったけど、社長がスーツを着て出社した事を言ってるんだな、と私は気付いた。

「そうなんです。スーツの次は髪の毛を染め直して頂くつもりです」

と、やや胸を張り気味にして私は言った。

「あなた、今来たばかりなのに、良く知ってたわね?」

あ。私ったら、墓穴を掘っちゃった?

「え、エレベーターでお会いしたんです。社長と、偶然に」

社長とエレベーターに乗ったの事実だから、今のは嘘ではないと思う。”偶然に”を除けばだけど。

「そう? でもいい傾向だわ。頑張ってね」

「はい、ありがとうございます。ところで、お聞きしたいのですが……」

「何かしら?」

「外出する時なんですが、課長に許可をいただかなくても良いのでしょうか? 他の方はされていないようで……」

昨日、ホワイトボードにささっと記入し、職場を離れて行った人がいて、外出時に上司の許可って要らないのかな、と私は疑問に思っていた。

「ああ、それね。昨日は言いそびれたけど、私の許可は要らないわ。ただ、なるべく声を掛けてくれると助かるわね」

「承知しました」

やったー。これで動きやすくなるわ。
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