チャラい社長は私が教育して差し上げます!
社長のコーヒーを持って社長室に入ると、スーツを着込んだ社長は、窓を背にして座っていて、真面目な顔でノートPCを操作していた。

私は右手を目の上にかざし、社長の頭部分を手で隠して見た。

うーん、今日の社長は完璧なビジネスマンだわ。それと、見惚れてしまうぐらいに、素敵。

「舞、何やってんだ? 眩しいのか?」

『はい。貴方が眩しいです』なんちゃって。

「いいえ、そんな事はありません」

私は右手を降ろしてトレイに添え、前に進んで社長の大きな机の上に、「どうぞ」と言ってコーヒーを置いた。

「サンキュー。今朝は悪かった。遅刻したか?」

「いいえ。ギリギリですが、間に合いました」

「そうか。それは良かった。明日からは、舞は電車で来た方が良さそうだな?」

「はい。そうさせて頂きます」

「おまえさ……」

と言い、なぜか社長は眉を下げた。

「その堅苦しい喋り方、何とかなんねえか?」

「なりません。ここは会社で、私は社長の秘書ですから」

「だったら、ここ以外で二人の時は、やめてくれないかな?」

「それは社長命令ですか?」
「そうだ」

「承知しました。努力します」

「それと、俺を”社長”と呼ぶのもやめてもらいたい。せめて俺の家では」

「努力します」

とは言ったものの、私の中で”社長”という呼称はしっかり定着していて、それ以外の呼称はピンと来ない。

なので、それは退社後だけにしようと思うけど、”直哉さん”って呼べるのかな。それこそ努力が必要かもしれない。

といった事は置いといて、そろそろ仕事モードに移らなくっちゃ。

「社長、今日のメールの整理なんですが……」
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