チャラい社長は私が教育して差し上げます!
『総務部の野田です』

「秘書課の朝倉ですが、野田様にご相談したい事がありまして、1時間ほどお時間を頂けないでしょうか?」

『30分後でしたら大丈夫ですが、どちらへ行けばよろしいでしょうか?』

「少しお待ちください」

私はそう言って、グループウェアで素早く会議室の空きを調べた。

「お待たせしました。受付の後ろの、応接会議室の8番でお願いします」

『応接会議室8番で、30分後ですね?』

「そうです」
『承知しました』

「では、よろしくお願いします」

ふうー、これで良しと。私は社長室へ行き、今の内容を社長に告げた。

ちなみに、恵子には社長が同行する事は敢えて言わなかった。恵子を驚かせるために。


25分後、私はWORDでプリントアウトした紙を持ち、社長と共に応接会議室8番へ行った。恵子は、まだ来てなかった。

それから1分後ぐらいに、「待たせちゃった?」という呑気な声と共に、恵子が会議室のドアを開いた。そして恵子は社長の存在に気付き、ハッと息を飲むのが分かった。

恵子は会議室に入りながら、私に口パクで『誰よ?』と言ったけど、私は敢えてスルーした。やはり恵子は、社長が社長とは認識出来ていないらしい。

私は椅子から立ち上がり、社長も立ち上がると、

「社長、こちらが総務部の野田恵子さんです」

と、社長に恵子を紹介した。恵子を見ると、目を大きく見開いていた。

私は恵子が心の中で、『えーっ、うっそー! 信じらんなーい』と言ったのが、聞こえた気がした。
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